コロナ関連痛みと疲労
コロナ関連(感染&ワクチン)痛みと疲労
Long COVIDの定義
2024年6月11日、米国科学・工学・医学アカデミー(NASEM)から「Long COVIDの定義:深刻な結果をもたらす慢性の全身性疾患(A Long COVID Definition A Chronic, Systemic Disease State with Profound Consequences)」が発表されました。
参考サイト:PDFが無料で入手できます。
本定義によると、「Long COVIDは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後に発生する感染関連の慢性疾患であり、1つ以上の臓器系に影響を及ぼす継続的、再発・寛解的、または進行性の病状が少なくとも3ヵ月間継続する」としています。
2024 NASEM Long COVID定義
ロングCOVID(LC)は、SARS-CoV-2感染後に発症し、1つ以上の臓器系に影響を及ぼす持続性、再発寛解性、または進行性の疾患状態として少なくとも3ヵ月間存在する感染関連慢性疾患(IACC)である。
LCは様々な形で現れます。
LC の徴候、症状、診断可能な病態を完全に列挙すると、何百もの項目があることになる。あらゆる臓器系が侵される可能性があり、LC 患者には以下の症状がみられる。
単一または複数の症状
息切れ、咳、持続的な疲労、労作後の倦怠感、集中困難、記憶力の変化、繰り返す頭痛、ふらつき、心拍数の速さ、睡眠障害、味覚や嗅覚の問題、腹部膨満感、便秘、下痢
単一または複数の診断可能な疾患
間質性肺疾患および低酸素血症、心血管系疾患および不整脈、認知障害、気分障害、不安、片頭痛、脳卒中、血栓、慢性腎臓病、体位性起立性頻脈症候群(POTS)その他の自律神経障害など、 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、線維筋痛症、結合組織疾患、高脂血症、糖尿病、ループス、関節リウマチ、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患
LCの重要な特徴
- LCは無症候性、軽症または重症のSARS-CoV-2感染に続発する可能性がある。以前の感染が認識されている場合もあれば、認識されていない場合もある。
- LCは、SARS-CoV-2急性感染時から継続することもあれば、急性感染から完全に回復したと思われた後、数週間から数ヵ月遅れて発症することもある。
- LC は、健康状態、障害、社会経済的地位、年齢、性別、性的指向、人種、民族性、地理的条件に関係なく、小児および成人に発症する可能性があります。
- LC は既存の健康状態を悪化させることもあれば、新たな症状として現れることもある。
- LCは軽度から重度まで様々です。数ヶ月で治癒することもあれば、数ヶ月または数年間持続することもある。
- LCは臨床的根拠に基づいて診断される。現在のところ、LCの存在を決定的に示すバイオマーカーはない。
- LCは、仕事、就学、家族の世話、介護などの能力を損なう可能性があります。また、感情面にも深刻な影響を及ぼす。
Long COVIDの症状としての起立不耐症(OI)
心血管の観点から起立性低血圧(OH)や体位性起立頻脈症候群(POTS)を含む起立性不耐症(OI)とロングCOVIDとの関連性が強調されています。ロングCOVIDにおけるOHの有病率は10%から41%の範囲である可能性があります。さらに、頻脈はロングCOVIDに関連する一般的な症状であることが判明しており、患者の25-50%が持続的な頻脈または動悸を報告しています。
長期COVIDが自律神経失調症および体位性頻脈症候群(POTS)を引き起こす潜在的な根本的メカニズム。
Chadda KR, Blakey EE, Huang CLH et al: Long COVID-19 and Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome-Is Dysautonomia to Be Blamed?. Frontiers in Cardiovascular Medicine 9. 1-5, 2022
- PASC患者では自律神経 機能障害の発生率が高く、79%がPOTSの国際診断基準を満 たしている。
- PASC集団では、すべてのサブドメインでCOMPASS-31 スコアが上昇し、有意な自律神経症状を示した。
- すべてのサブドメインでHrQoLに有意な障害があり、有意な健康障害をもたらした。4)PASCコホートは高齢であったが、POTSと同様の女性優位であった。
※PASC (post-acute sequelae of SARS-CoV-2:SARS-CoV-2の急性期後遺症)
WHOではPost-COVID condition、米国ではPost-acute sequelae SARS-CoV-2 infection (PASC)と言われています。
Seeley MC, Gallagher C, Ong E, et al: High Incidence of Autonomic Dysfunction and Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome in Patients with Long COVID: Implications for Management and Health Care Planning. The American Journal of Medicine: 1-8. 2023
Long COVIDの治療
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FLCCC Alliance(Front Line COVID-19 Critical Care Alliance :最前線のCOVID-19の救命救急アライアンス)の予防と治療のプロトコルに基づいた治療を行なっています。
※ 海外でも、賛否両論ある治療方針ですが、実際の、コロナ後遺症の方々の希望の光として、予防と治療のプロトコルを採用しています。
FLCCCに対する非難的記事:(Wikipedia, Front Line COVID-19 Critical Care Alliance) -
Genevra Liptan著、「The FibroManual – A Complete Fibromyalgia Treatment Guide for You and Your Doctor」の「4つのR」を中心に治療を行なっています。
(当院ホームページの線維筋痛症②(治療)の参照をお勧めします。) -
最新のME/CFSのレビューを参考に、上記1,2と合わせて治療を行なっています。(当院ホームページの筋痛性脳症/慢性疲労症候群:ME/CFS、起立性調節障害(OD)もしくは起立不耐症(OI)の参照をお勧めします。)
Arron HE, Marsh BD, Kel DB: Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome: the biology of a neglected disease. Front. Immunol 15: 1-34,2024
Fu Q. Levine BD: Exercise and non-pharmacological treatment of POTS. Autonomic Neuroscience: Basic and Clinical 215: 20–27, 2018 - 上記に加えて、Dr. Genevra Liptanの著書以外の治療情報、点滴療法研究会、臨床CBDオイル研究会等で入手した治療情報、永田勝太郎先生の著書等を参考に、新たな治療情報の入手を心がけ、治療を行なっています。
★当院での治療の実際
推奨されている、すべての検査、すべての治療法を行なうことは困難です。また、高価な検査や治療法をできるだけ行なわないようにしていますが、限界もあります。できる範囲で、さまざまな治療法を駆使し、良好な治療関係の元、良い方向を目指して行きたいと存じます。