線維筋痛症(FM)

 

線維筋痛症(fibromyalgia: FM)とは

 

本邦の線維筋痛症ガイドライン2017によると

 

「線維筋痛症(FM)は、からだの広い部位に、筋肉や関節の慢性の痛みとこわばりを主な症状とし、明らかな部位に圧痛(おすと起きる強い痛み)以外に、一般的な検査所見に異常がなく、治療抵抗性(治療しても改善することがむずかしい)であり、疲労感、睡眠障害や抑うつ気分(落ち込んだ気持ち)などの多彩な身体および精神・神経症状を伴い、中年以降の女性に多く起きる原因不明のリウマチ性疾患である。」

とあります。

 

 

線維筋痛症(FM)は全身の痛みがつらく長く続いてしまう疾患ですが、自分以外の人や、医師にまでも理解されないことが多く、孤独な闘いを強いられます。

 

整形外科外来では、肩こり、腰痛などの痛みの患者さんの中に、線維筋痛症(FM)の患者さんがしばしば存在します。

 

 

 

線維筋痛症(FM)対する理解のパラダイムシフト

 

本邦の最新の慢性疼痛診療ガイドラインによると、

 

線維筋痛症(fibromyalgia:FM)は

 

身体の広範な部位に、原因不明の慢性疼痛と全身性のこわばりを主徴候とし、随伴症状として多彩な身体症状、神経・精神症状を伴い、いずれの徴候も慢性疼痛と同様に

体診察や一般的画像検査を含む臨床検査では症状を説明できる異常を見いだせない

 

と定義されています。

 

 

さらに、線維筋痛症の痛みは侵害受容性疼痛ではなく、病巣が特定されない神経障害性様の中枢性疼痛とされており、いわゆる痛みの中枢性感作が成立し、中枢性感作症候群(central sensitization:CS)の一つであると記載されています。

 

つまり、線維筋痛症の痛みは、脊髄や脳の働きの障害が引き起こすものであるということです。

 

 

 

慢性疼痛診療ガイドライン作成ワーキンググループ編: 慢性疼痛診療ガイドライン. 真興交易(株)医書出版部, 東京, 2021

 

 

ところが…

 

 

2013年、ハーバード・メディカルスクール・マサチューセッツ総合病院、神経内科医アン・ルイーズ・オークランダー医師が線維筋痛症臨床における革新的な論文を報告していました。

 

それによると、線維筋痛症の痛みは小径線維ニューロパチー(small fiber neuropathy:SFNであり、原因は不明ではなく病理学的に明らかに証明できるものであると述べました。

 

そして、線維筋痛症(FM)は中枢性感作症候群(CS)で理解するのではな

 

まず小径線維ニューロパチー(SFN)で理解するものであと述べました。

 

 

この報告以来、欧米の線維筋痛症(FM)に対する理解は一変しました。

 

 

・Oaklander: AL,: Herzog ZD, Downs H et al: Objective evidence that small-fiber polyneuropathy underlies some illnesses currently labeled as fibromyalgia, Pain 154(11): 2310-2316, 2013

 

 

 

 

線維筋痛症(FM)おける筋痛のメカニズム ―小径線維ニューロパチー(SFN)の視点から―

 

 

筋痛は局在の不明瞭な鈍い痛みとして知覚されます。筋痛は痛みというよりは、時に不快感として表現され、しばしば関連痛(referred pain)を伴います21)

 

筋痛発症のメカニズムとして、

SFNにより除神経され拡張した動静脈吻合により動脈血が静脈血にシャント毛細血管をバイパスすることにより筋細胞から動脈血を奪い局所の低酸素血症が生じます

 

このことは骨格筋灌流障害深部痛労作不耐症を少なくとも部分的に説明することができます1,5,28,29)

虚血性損傷を起こした筋のfasciaなどにはATP、乳酸、プロトン(H+)などの代謝産物や過酸化水素など有害なフリーラジカルが発生し、それらの刺激にⅢ・Ⅳ群線維(Aδ・C線維)が反応します。虚血状態ではⅣ群線維(C線維)が優先的に活性化します。

 

虚血性損傷を来した筋ではNGFグリア細胞株由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor:GDNF)およびIL(interleukin)1βなどの炎症サイトカインなどが発生しⅢ・Ⅳ群線維(Aδ・C線維)の自由神経終末や後根神経節を刺激するします。

 

 

そして虚血性損傷を来したそれらの神経の後根神経節では多様なチャネルや受容体が発現し痛みの末梢性感作(peripheral sensitization:以下PS)に関連します。

 

 

 

fascia(ファッシア)の痛み

 

Ⅳ群線維はC線維に相当し、終末の多くはfasciaと骨格筋内の細動脈壁に存在します。

 

筋の支配神経は約43%の感覚神経(Aβ、Aδ、C線維)、約40%の血管運動神経(交感神経節後線維:C線維)そして約17%の運動神経(Aα、Aβ線維)で構成されます。

 

そのうち感覚神経の約80%はⅢ群線維(Aδ線維)およびⅣ群線維(C線維)で、特にⅣ群線維(C線維)が多くを占め、間質受容体(自由神経終末)としてfasciaに多く存在します。

 

Fasciaは全身におよぶ連続する広大な一枚の構造を持ち、筋、骨、関節、腱、内臓を覆い最も大きな感覚器官と言われます。

 

 

おすすめ参考書籍

 

 

 

 

線維筋痛症(FM)の診断基準および臨床評価など

 

米国リウマチ学会(ACR)1990年 線維筋痛症分類基準の圧痛点(Wolfeら)

 

1,「広範囲の疼痛」の既往がある

定義

・疼痛は以下のすべてが存在するとき「広範囲の疼痛」とされる

・身体左側の疼痛、身体右側の疼痛、腰から上の疼痛、腰から下の疼痛さらに体幹中心部(頸椎、前胸部、胸椎、腰椎のいずれかの痛み)が存在する

 

2,手指による触診で18箇所の圧痛点部の11箇所に圧痛を認める

定義

・約4kgの強さの手指による触診で、下図に示した合計18箇所の圧痛点のうち11箇所以上に疼痛を訴える

 

判定

上記の2項目を認める場合に、線維筋痛症と診断(分類)される。

「広範囲の疼痛」は少なくとも3か月以上持続する必要がある

 

 

 

 

線維筋痛症(FM)の臨床症状と重症度分類

 

ステージⅠからステージⅤまでの段階は、

身体的苦悩(BD)から慢性機能障害性身体的苦痛(CDBD)へ至る段階と一致すると考えられます。

 

ステージⅠの段階、その前の段階で、

治療介入ができると回復可能性が高いと考えられます。