痛みと疲労の検査
本ホームページでは、痛みと疲労の中心の疾患あるいは病理を特発性(idiopathic)・小径線維ニューロパチー(iSFN)との前提で捉えます。
末梢・中枢感作や、認知の歪み等の心理的偏りが出現した患者さんの状態を把握できる検査ではありません。
後天性(acquired)、遺伝性(hereditary)、症候群性(syndromic)による小径線維ニューロパチー(SFN)は、各専門分野の領域であり、当院は、整形外科および心身医学(専門横断的)アプローチが基本専門分野のため、これらの疾患によるSFNは診療できません。
当院におけるiSFNの検査は、大きく、
① SFNの診断と重症度評価のための検査
② 要因であるホメオスタシスの歪みを捉える検査
の2種類があります。
★ 通常の一般的整形外科医療の合間で、近隣の方々を対象に、わずかな診療時間を確保し痛みと疲労の治療を行っています。
マンパワー不足により検査時間の確保が困難であること、経済的負担をできるだけ少なくする方針のため、当院では検査項目を随分少なくしています。
ですから当院で行っている検査だけではホメオスタシスの歪みを把握することに十分とはいえません。
SFNに対する検査の目的ではありませんが、痛みや疲労などの身体の不調に対してホメオスタシスの歪みに対する検査を十分に行っている医療機関が多数あります。
オーソモレキュラー療法、分子整合栄養学、点滴療法、機能性低血糖、副腎疲労、機能性医学、腸内細菌などで検索すると、様々な医療機関がヒットします。
当院よりはるかに多くの検査の種類があり、iSFNが発症するホメオスタシスの歪みをより的確に捉えることができると考えられます。
本ホームページは、当院での治療内容よりも、医学情報の提供を主としています。
皆さまの近隣にも十分に検査ができる医療機関がある可能性があります。
検索してみてはいかがでしょうか。
SFNの診断と重症度評価のための検査

小径線維ニューロパチー(SFN)の検査は上図に記載されたものがあります。
しかし、施設の規模により施行には限界があり、当院では、心血管機能検査のみを行っています。
各検査方法の限界と適応可能レベル(オランダ・SFNレビューより)
各検査方法の限界と適応可能レベル (文献を和訳して引用) | ||
方法 | 限界 | 適応可能レベル |
小径線維密度の定量化 | ||
皮膚生検
表皮内神経線維密度(intra-epidermal nerve fiber density:以下 IENFD)を測定 |
・ルーチン診断には適用できない組織切片の厚さ
・蛍光顕微鏡の利用価値が小さい ・光学顕微鏡で表皮の長さあたりのIENF数をカウントするには、コンピュータによる画像解 析を行わなければ容易に標準化できない ・健常者にも形態的変化が現れる ・IENFDの減少を伴わない形態的変化が生じることがある ・IENFDの減少は、すべてのケースで痛みの強さとは相関しない ・SFNの早期に正常なIENFD+形態変化が現れ、繰り返し生検を行うとIENFDが減少する ことがある。 ・パッチ状の疾患では不明瞭な場合がある ・対称的で非長さ依存の神経障害性疼痛のパターンは、顔や体幹に病変があることを示唆している。 ・非長さ依存性の神経障害性疼痛で、顔や体幹にも症状が現れる。 ・トレーニングが必要 |
レベル 3 |
汗腺の神経線維密度 (sweat gland nerve fiber density: SGNFD)を測定 |
・複雑な3次元構造
・標準化された検証済みの方法がない ・限られた視野深度 バイオプシー厚さ50μm ・手間がかかる(染色のみで30~40時間) ・日常的な使用には適用されない |
レベル 4 |
角膜共焦点顕微鏡(corneal confocal microscopy CCM) |
・限定販売 ・FDAによる臨床使用の未承認 |
レベル 4 |
感覚機能検査 | ||
定量的感覚検査(quantitative sensory testing: QST) | ・検者間のばらつきが大きい
・世界的な標準化の欠如 ・患者のモチベーションの低さが検査結果に影響することがある ・標準値研究の手法が大きく異なるため、標準値の解釈が難しい ・痛みのある部位と反対側の部位の比較は、最小有意差がないため困難である |
レベル 2 |
マイクロニューログラフィー | ・侵襲的
・技術的な要求度が高い ・労働集約的 ・単一の小径線維の測定 ・標準値がない ・研究でのみ使用 |
レベル 4 |
副交感神経系検査と交感神経系アドレナリン検査 | ||
心臓迷走神経検査 | ・反応は、持続時間、緊張度、圧力変化率、実施する体位(標準化されていない)、 体液の状態、操作前の休息時間と体位、吸気回数、時間帯、室温、食事量、カフェイン、ニコチン、投薬」、開始方法(自発的か合図後か)、年齢に依存する。 ・複雑な生理学的メカニズム ・手法や基準値の標準化が浸透していないこと ・カスタムメイドを含む様々なデバイスが利用可能 ・訓練と専門知識の必要性 |
レベル 1 |
瞳孔測定 | ・反射の大きさは可変で、初期の瞳孔サイズに影響される
・テストの条件を強固に標準化しない場合、感度の悪い検査となる ・ 結果の解釈は困難、障害は目に対称的に出現する |
レベル 1 |
膀胱機能検査 | ・良好なキャリブレーションが必要
・患者との良好な連携と指導が必要 ・結果の質のチェックは重要だが、アーテファクトの影響を受ける可能性がある |
レベル 1 |
交感神経系コリン作動性試験 | |||
温熱性発汗試験(thermoregulatory sweat test: TST) | ・高度に専門化したセンターを除き、日常的な使用には適用されない
・時間がかかる ・専用機器が必要 ・大きなスペースが必要 ・患者の特別な準備が必要 |
レベル 3 | |
定量的軸索反射性発汗試験
(quantitative sudomotor axon reflex test: QSART) |
・専用機器が必要
・スタッフの訓練が必要 ・高額 |
レベル 2 | |
シリコン印象法
(silicone impressions) |
・アーティファクトが発生しやすい ・歯型の品質が最適でない
・時間がかかる ・時間分解能なし ・神経因性の障害と腺因性の障害を区別することはできない ・標準化していない ・試験する肌と環境の準備 |
レベル 4 | |
発汗運動機能の 定量的直接・間接試験 (quantitative direct and indirect test of sudomotor function QDIRT) |
・スタッフの訓練が必要
・皮膚部分の色素がすでに色変化している場合は、定量化できない ・定義された皮膚領域がないため、個人間の比較可能性が低い ・間接的な部分には指標となる色素がない場合がある ・まだ検証されていない |
レベル 4 | |
交感神経性皮膚反応(sympathetic skin response SSR) | ・個人間の比較可能性が低い
・加齢とともに減少し、50歳以上の対象者には見られないこともある ・先天性無汗症の患者でも、SSRの反応はある |
レベル 1 | |
Sudoscan/EZSCAN | ・研究で使用されている基準値には一貫性がない
・ sudoscanが運動神経や感覚神経の機能を検査するという主張を裏付ける証拠不十分であること ・多くの研究はメーカーがサポートしている |
レベル 1 | |
レーザードップラー イメージングフレア(LDIflare) |
・オリジナルの方法は時間がかかる(30-90分)ため、日常的な臨床使用には限界がある
・より時間のかからない(30分未満)修正方法が提案されているが、他の研究グループではまだ広く適用されていない |
レベル 4 | |
Neuropad | ・診断価値に関するデータが異なる
・製造者の指示では、最適ではないかもしれない ・皮膚温度への影響については、限られたデータしかない |
レベル 1 | |
水誘発皮膚しわ試験(water induced skin wrinkling test: WISW) | ・異常値を決定する標準的な方法がない
・各研究室では、正常なしわと異常なしわの年齢に合わせたカットオフ値を決定する必要がある |
レベル 1 | |
交感神経系・ノルアドレナリンテスト | |||
定量的軸索反射性毛根運動試験(QPART) | ・少人数でのテストのみ
・基準値がない ・強い感情と室温の影響を受ける |
レベル 4 | |
MIBG/SPECT | ・標準的な方法がない
・基準値がない |
レベル 2 | |
非小径線維テスト | |||
末梢神経超音波 | ・この方法の可能性を示すために、1つだけ最適ではない研究が行われている | レベル 4 | |
機能的磁気共鳴画像(fMRI) | ・この方法の可能性を示すために、1つだけ最適ではない研究が行われている
・SFNの診断に特化した標準的な方法はない |
レベル 4 | |
これらのレベルは、オランダの医療制度に基づいている。
レベル1:総合病院で適用(どの病院でも適用しやすい) |
|||
Raasing LRM, Vogels OJM, Veltkamp M, et al: Current View of Diagnosing Small Fiber Neuropathy. J of Neuromuscular Diseases 8: 185-207, 2021
SFN診断のためのサポートツール

いろいろな質問票がありますが、決定版はありません。
当院では、
Visual Analogue Scale(VAS)
簡易マギル疼痛質問表-2 (McGill SF-MPQ-2)
ユタ早期神経障害スケール(UENS)
を使用しています。
当院におけるホメオスタシスの歪みの検査
血行動態(自律神経系+血圧調節系)の検査
ヘッドアップチルト試験に伴う血行動態反応検査


胸部レントゲン検査

代謝系の検査
血液検査
1,慢性の痛みと疲労を起こす病気が潜んでないかをスクリーニングします。
例:甲状腺機能低下症(亢進症)、肝機能障害、腎機能障害、脂質異常症、糖尿病、貧血、関節リウマチ、膠原病、脱水症など
2,上記の血液検査で病気がなければ、small fiberに悪影響を及ぼす状態がないかどうか、分子栄養学もしくは分子整合栄養学の見地から検査データを見直します。
例:タンパク質不足、ビタミンB不足、鉄不足、亜鉛不足、葉酸不足などが分かる場合があります。

一日持続血糖測定検査(Flash Glucose Monitoring:FGM)
Abbott社 FreeStyleリブレProを使用し、24時間、2週間にわたり持続的に血糖値を測定します。


酸化ストレス防御系の検査


生活習慣見直しノート



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生活習慣の乱れ、特に、不適切な食生活は特発性・小径線維ニューロパチー(iSFN)発症の要因となることがあります。
この飽食の時代、美味しい食物がふんだんにあるために、反って不適切な食生活をおくってしまう方が非常に多いと感じています。
人間が進化したために、反って健康や生命を損なう環境を創ってしまいました。
これは「進化のミスマッチ」といえます。
SFNが発症してしまう、生活習慣の見直しに、このノートは役に立ちます。
このノートは、(株)ライフクオリティ研究所(https://www.lqijp.com)で販売しています。
★このノートに記載している、ルコスとは、低血糖是正の効果があると研究報告された乳酸菌です。1日持続血糖検査結果により、確実に効果が確認され、ご希望された方にのみ、お勧めしています。ルコスの投与および、記載は必須ではありません。